帰るさ
かえるさ
名詞
標準
文例 · 用例
さて、それだけで帰りがけじゃい、の、殿、その帰るさに、これへ寄った。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
帰りたくなつたら帰るさ。
— 太宰治 『お伽草紙』 青空文庫
駱駝に乗つてピラミツドの周辺を逍遥しての帰るさ立寄つたホテルの露台の籐椅子にもたれて私は埃及の空に輝く星々を心ゆくまで眺めることが出来た。
— 岡本かの子 『星』 青空文庫
娘達が忙しいお辻の手から育ての侍女の手に移つてこゝの離れ家に棲み始めて十何年間、朝夕二回の屋敷へ往くさ帰るさ、必ず宗右衛門はこの部屋へ立ち寄つた。
— 岡本かの子 『老主の一時期』 青空文庫
詩人が庭のたき火も今夜をかぎりなれば残り惜しく二人は語り、さて帰るさ、庭の主人に一語の礼なくてあるべからずと、打ち連れて詩人の室に入れば、浮世のほかなる尊き顔の色のわかわかしく、罪なき眠りに入れる詩人が寝顔を二人はしばし見とれぬ。
— 国木田独歩 『星』 青空文庫
いつぞやらん、その松任より、源平島、水島、手取川を越えて、山に入る、辰口という小さな温泉に行きて帰るさ、件の茶屋に憩いて、児心に、ふと見たる、帳場にはあらず、奥の別なる小さき部屋に、黒髪の乱れたる、若き、色の白き、痩せたる女、差俯向きて床の上に起直りていたり。
— 泉鏡花 『一景話題』 青空文庫
待つには長き日も立ちて、明日はいよ/\其日となりたる二十日の朝、聊か事ありて浅草まで行きたる帰るさ、不図心づきて明日の遊びの用の釣の具一ト揃へを購はんと思ひしかば、二天門前に立寄りたり。
— 幸田露伴 『鼠頭魚釣り』 青空文庫
船の帰るさに順風を得たるは、船子にも嬉しからぬことあらじ。
— 幸田露伴 『鼠頭魚釣り』 青空文庫