幻辞.com

島抜け

しまぬけ
名詞
1
標準
文例 · 用例
それを有難いと思っていればいいんですが、女のくせに大胆な奴で、二年目の天保十一年に島抜けをして、こっそりと江戸へ逃げ帰ったんです。
大阪屋花鳥 半七捕物帳 青空文庫
だが、何人も、この坊主の前身を、ほんとうに気がついているものはすくなかろう――鉄心庵現住の、大坊主、これこそ、その道では名の通った、島抜けの法印という、兇悪な代ものなのだ。
三上於菟吉 雪之丞変化 青空文庫
島抜けの法印は、婦女|誘拐を職とする、法網くぐりの女衒たちのために、仲宿をすることもあるので、女わらべの泣きごえが、世の中に洩れるのをはばかり、庫裡の下に窖を掘って、そこに畳をしき込み、立派な密室を造っていた。
三上於菟吉 雪之丞変化 青空文庫
島抜け法印、いつもであれば、預かりものが、年はもいかぬ娘っ子なので気も張らぬが、今度は相手が相手、なかなか気苦労が折れるらしく、例の寝酒も、この四、五日はつつしんでいた。
三上於菟吉 雪之丞変化 青空文庫
二 島抜けの法印、破れ行灯の、赤黒い、鈍い灯火の下に、大あぐら、古ぬの子から、毛深い胸を出して、たった一人、所在なさげに、白丁から、欠茶碗に、冷酒をついでは、ごくりごくりと飲っているが、もう一升徳利が一本、五合のが、二本目も尽きかけて来ているのだ。
三上於菟吉 雪之丞変化 青空文庫
島抜けの法印、厚い、紅い舌を出して、物ほしそうに、ぺろりと舌なめずりをして、 ――こうやって、たった一人、しょうことなしの独酌に、何のうめえ味がある――これが、美女のお酌と来てごろうじろ。
三上於菟吉 雪之丞変化 青空文庫
三 島抜け法印の、どんぐり目は、いよいよギラギラと、耀めいて来た。
三上於菟吉 雪之丞変化 青空文庫
そうだ、ひとつ、退屈しのぎに、からかいに行ってやろうか―― 島抜け法印、残りの白丁を振って見て、 ――こんなことなら、独りでがぶ飲みをするんじゃなかったが、それでもまだ、あいつが、ほろりとするぐれえは残っていらあ。
三上於菟吉 雪之丞変化 青空文庫