恍け
とぼけ
名詞
標準
文例 · 用例
そのころ毎日のように渓間を遊び恍けていた私はよくこんなことを口ずさんだ。
— 梶井基次郎 『交尾』 青空文庫
それでいつもながら少し揶揄い気味に、「転んでも、たゞでは起きない相手の胸倉って何よ」 と恍けて訊いてやりますと、母は今度は両袖の口を指先で掴んで背中が痒いように左右に引いて、上体をやけのように身揺ぎ一つさせると同時に、「お巫山戯でないよ。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
へん、いくら、おまえさんが恍けたって、ちゃんとおっかさんには判ってるのだから。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
その恍けた大きな眸とぶつかった時、智子は少なからず狼狽した。
— 渡辺温 『或る母の話』 青空文庫
」と空恍けたやうにいふ。
— 三島霜川 『青い顏』 青空文庫
」と空ツ恍けるやうに、ちらと空を仰ぎながら、「とすりや、そりや俺がお前を擇んだのぢやない、俺の若い血がお前に惚れたんだらう。
— 三島霜川 『青い顏』 青空文庫
誰の顏を見ても、恍けてもゐなければ笑ツてもゐない、何か物思に沈むでゐるのでなければ、一生懸命になツてゐるか威張ツてゐるか、大概此の型に定ツてゐるから、何れも何か目的と意味を持ツて大眞面目であるに違ない。
— 三島霜川 『解剖室』 青空文庫
勘定のだらしのないのは、大抵のこの稼業の女の金銭問題にふれたり、手紙を書いたりするのを、ひどく億劫がる習性から来ているのであったが、わざと恍けてずるをきめこんでいるのも多かった。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫