聴手
ききて
名詞
標準
文例 · 用例
時には自分の珍しい是等の聴手は如何思ふことだらうと僻まれた、その訓辞の大体はかうだつた。
— 中原中也 『校長』 青空文庫
即興詩の、聴手は喜ぶものであれど、歌ふ身になつてみれば心許ないわざであらう。
— 中原中也 『青年青木三造』 青空文庫
聴手は勿論プロレタリア諸君。
— 岡本かの子 『伯林の降誕祭』 青空文庫
人が知らんというのに反って調子づいて、秘密の話だよ、此場限りだよと、私が十人目の聴手かも知れぬ癖に、悪念を推して、その何某が友の何某の妻と姦通している話を始める。
— 二葉亭四迷 『平凡』 青空文庫
それもドブンと不意に川に陥つたやうに其話に移るので、聴手は一寸|呆気に取られてゐる中に、話は一蹶して向岸に躍り上つてしまふ事がある。
— 二葉亭四迷 『露都雑記』 青空文庫
その様子を見る度に、以前の物語の聴手達は、この莫迦面の怠け者に、貴い自分達の冬籠りの食物を頒けてやったことを腹立たしく思出した。
— 中島敦 『狐憑』 青空文庫
シャクの最も熱心な聴手だった縮れっ毛の青年が、焚火に顔を火照らせながらシャクの肩の肉を頬張った。
— 中島敦 『狐憑』 青空文庫
それがただ自分の伜を相手にするばかりでなく、時々はねえ市さんと、そんな事にまるで冷淡の僕まで聴手にするのだから少し変であった。
— 夏目漱石 『彼岸過迄』 青空文庫