魔天
まてん
名詞
標準
文例 · 用例
憤死事件 牧仲太郎は、寝不足の眼を血走らせて、誰も入れない一間で、魔天の像を描いていた。
— 直木三十五 『南国太平記』 青空文庫
白い絹の上に描かれて行く魔天の線は、所々薄ぐろく、所々は紅であった。
— 直木三十五 『南国太平記』 青空文庫
眉を立て、眼を怒らせ、口を張った魔天の形は、巧みではなかったが、人に迫る凄惨さを現していた。
— 直木三十五 『南国太平記』 青空文庫
その鉢の中に、淀んでいる赤黒い液体は、犬の血と、牛の血と、仲太郎の腕の血との混ったものであったし、魔天を描いている筆は、十三人の人間の生き毛と、八種の獣の毛とを合せて造った筆であった。
— 直木三十五 『南国太平記』 青空文庫
二人が抱えると「刀を――げ、玄白斎の最期の血を、魔天に捧げて、あの世の呪いとなしくれる。
— 直木三十五 『南国太平記』 青空文庫
彼は日本支那の美術史にも詳しく、通訳官を通じての批評、悉く肯綮に当るばかりでなく、最も侯爵を喜ばせたのは、幾百万の金銭にも換え難き名宝として珍蔵せる、藤原時代の極彩色仏画「閻魔天像」と、同時代の作、木造塗箔の阿弥陀如来坐像との前に、伯爵は最も長く立止り、垂涎おく能わざる体に見えたことである。
— 江戸川乱歩 『黄金仮面』 青空文庫