逸散
いっさん
名詞
標準
文例 · 用例
其|剣幕に驚きまどひて予も慌たゞしく逃出だし、只見れば犬は何やらむ口に銜へて躍り狂ふ、こは怪し口に銜へたるは一尾の魚なり、そも何ぞと見むと欲して近寄れば、獲物を奪ふとや思ひけむ、犬は逸散に逃去りぬ。
— 泉鏡花 『妖怪年代記』 青空文庫
私を看附るや、逸散に飛んで来て、飛付く、舐める。
— 二葉亭四迷 『平凡』 青空文庫
二三度|彼方此方で小突かれて、蹌踉として、危うかったのを辛と踏耐えるや、後をも見ずに逸散に宙を飛で家へ帰った。
— 二葉亭四迷 『平凡』 青空文庫
母は一寸躊躇ったようだったが、思切って投出すように、「殺されたとさ……」 逸散に駈て来て、ドカッと深い穴へ落ちたら、彼様な気がするだろうと思う。
— 二葉亭四迷 『平凡』 青空文庫
是れ白根の山、一たび轟烈爆然火を噴くに當りてや、泥土熱し逸散する所、所在に此慘を現ずるなり。
— 長塚節 『草津行』 青空文庫
それだのに、この室では、まるで早苗の情熱から逸散してでも行くかのように、涼しげな、清々しい花粉の香りがする。
— 小栗虫太郎 『地虫』 青空文庫
もっともこれに対しては地球がはるかな過去のある時代に、今に比べてはるかに高温でありまた巨大であった時分に、ヘリウムが既に地球雰囲気から逸散してしまったであろうということも考えられないことではない。
— スワンテ・アウグスト・アーレニウス Svante August Arrhenius 『宇宙の始まり』 青空文庫
ヤーイ/\」と惡太郎にからかはれて、子供はわつと泣き出し、顏に手を當てて校門を飛び出し、吾家の方へ向つて逸散に駈け出す姿が眼に見えるやうだつた。
— 嘉村礒多 『崖の下』 青空文庫