幻辞.com

箇一

箇一
名詞
1
標準
文例 · 用例
例えば、此処に茶碗がある、茶卓がある、土瓶がある、鉄瓶があるといふ如く、此等の物も実に測り知られざる数であるが、兎に角我心以外の物であつて、所謂物質といふ言葉で尽されるもので、その一箇一箇は固定してゐる。
幸田露伴 些細なやうで重大な事 青空文庫
一人一人の人は一箇一箇の失錯で、有るよりは無いが好いのである。
森鴎外 妄想 青空文庫
おもむろに庭樹を瞰めて奇句を吐かんとするものは此家の老畸人、剣を撫し時事を慨ふるものは蒼海、天を仰ぎ流星を数ふるものは我れ、この三箇一室に同臥同起して、玉兎幾度か罅け、幾度か満ちし。
北村透谷 三日幻境 青空文庫
一、餅菓子の白き色にして一箇一銭を値する者その色を赤くすれば則ち一箇二銭五|厘となる。
正岡子規 病牀六尺 青空文庫
そんな、花輪の一箇一箇が出来るだけ大仰に足を高々とつけて、それを機会として自家広告をしているような葬式を通りぬけて、かえってからよせ鍋の夕飯を五時すぎにすませ、七時には家を出て車で東京駅までゆきました。
一九三八年(昭和十三年) 獄中への手紙 青空文庫
そこから間斷なく切り出される大きい羊羮のやうな長方形の土塊は屋外に搬び出されると、手拭を冠つた女達の手に、一箇一箇と莚の上に並べられた。
若杉鳥子 梁上の足 青空文庫
その一箇一箇の生命が、いかに自覚するか、それらの無数の家族たちがいかに将来へ結果してゆくか、老公のねがうところは、「みな、わたくしの臣ならず、一藩のものではない。
吉川英治 梅里先生行状記 青空文庫
鷲津、丸根をはじめ、善照寺、中島、その他数ヵ所の敵の砦は、それを聯絡すれば、大きな敵ではありますが、一箇一箇に見れば、元来、一箇一箇のものでしかございません」 云い方がおかしいので、誰か苦笑をもらしたが、元康は、厳粛になって聞いていた。
第二分冊 新書太閤記 青空文庫