引き直し
ひきなおし
名詞
標準
文例 · 用例
姫君がこちらへ来ると言って、女房たちがにわかに立ち騒いで、几帳の切れを引き直したりなどしていた。
— 野分 『源氏物語』 青空文庫
居室にいた女房たちはいつものように几帳の垂れ絹を引き直しなどして用意をした。
— 東屋 『源氏物語』 青空文庫
彼は世間並な道義心の所有者としてありふれた人間の一人であったけれども、その道義心は彼の空想力と違って、いざという場合にならなければ働らかないのを常とするので、停留所の二人を自分に最も興味のある男女関係に引き直して見ても、別段不愉快にはならずにすんだのである。
— 夏目漱石 『彼岸過迄』 青空文庫
先刻双眼鏡を向けられた時、すでに挨拶に行かなければならないと気のついた彼女は、即座にそれを断行する勇気を起し得なかったので、内心の不安を質問の形に引き直して叔母に相談しかけながら、腹の中では、その義務を容易く果させるために、叔母が自分と連れ立って、夫人の所へ行ってくれはしまいかと暗に願っていた。
— 夏目漱石 『明暗』 青空文庫
けれども事状を一向知らない彼は、それを健三の身の上に引き直して見る事が出来なかった。
— 夏目漱石 『道草』 青空文庫
なるべく通俗的に引き直して佳人淑女の眷顧に背かざらん事を期する訳でありますが、これからは少々力学上の問題に立ち入りますので、勢御婦人方には御分りにくいかも知れません、どうか御辛防を願います」寒月君は力学と云う語を聞いてまたにやにやする。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫
通禧らは時計の針を正午のところに引き直して行って、ようやく約束を果たし、横浜の方へ引き返すことだけはどうやら先方に思いとどまってもらった。
— 第二部上 『夜明け前』 青空文庫
それは十六、七枚からの長い請願書で、木曾谷山地古来の歴史から、維新以来の沿革、今回請願に及ぶまでのことが述べてあるが、筋もよく通り、古来人民の自由になし来たった場所はさらに民有に引き直して明治維新の徳沢に浴するよう寛大の御沙汰をたまわりたいとしたものであった。
— 第二部下 『夜明け前』 青空文庫