その折
そのおり
名詞副詞
標準
on that occasion
文例 · 用例
いいえ、お逢いしたことは無いのでございますが、私が、その五、六日まえ、妹の箪笥をそっと整理して、その折に、ひとつの引き出しの奥底に、一束の手紙が、緑のリボンできっちり結ばれて隠されて在るのを発見いたし、いけないことでしょうけれども、リボンをほどいて、見てしまったのでございます。
— 太宰治 『葉桜と魔笛』 青空文庫
停車場近くの神社で花崗石の石の鳥居が両方の柱とも見事に折れて、その折れ口が同じ傾斜角度を示して、同じ向きに折れていて、おまけに二つの折れ目の断面がほぼ同平面に近かった。
— 寺田寅彦 『静岡地震被害見学記』 青空文庫
今も松虫の声きけばやがてその折おもひ出られて物がなしきに、籠に飼ふ事は更にも思ひ寄らず、おのづからの野辺に鳴弱りゆくなど、唯その人の別れのやうに思はるゝぞかし。
— 樋口一葉 『あきあはせ』 青空文庫
その折には、リルケも大いに喜んで一書を寄せた。
— ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 『旗手クリストフ・リルケ抄』 青空文庫
――その村からリルケはロダンに宛てて二通の手紙を書いてゐるが、最初の三月二十七日日付のものは、「オオギュスト・ロダン」が漸く出來たので、それを當時巴里に居た彼の妻クララにロダンの許へ屆けさすやうにした、その折の手紙である。
— ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 『リルケ書翰(ロダン宛)』 青空文庫
そして、そのレコオドも買ひ歸られ、一度聽かして戴く約束をしながら、どういふ譯か自分はとうとうその折を持たなかつた。
— 南部修太郎 『日曜日から日曜日まで』 青空文庫
そして本|科二三年の時分には百五十|點にまでせり登つて、球突塲の常連でも大|關格ぐらゐになつたが、何としてもその折々の氣分に左右され勝ちな自分の本|性は爭へなかつた。
— 南部修太郎 『文壇球突物語』 青空文庫
その後|間もなく、ちやうど三|浦三|崎の宿屋に滯在中に訃音に接した時、私はまだあまりにまざまざしいその折の印象を思ひ出させられるだけに、哀悼の氣持も一そう痛切だつた。
— 南部修太郎 『文壇球突物語』 青空文庫