明く
あく
動詞
標準
文例 · 用例
思ふ人を遠き県などにやりて、明くれ便りの待わたらるゝ頃、これを聞たらばいかなる思ひやすらんと哀れなり。
— 樋口一葉 『あきあはせ』 青空文庫
我れと我が身に持て腦みて奧さま不覺に打まどひぬ、此明くれの空の色は、晴れたる時も曇れる如く、日の色身にしみて怪しき思ひあり、時雨ふる夜の風の音は人來て扉をたゝくに似て、淋しきまゝに琴取出し獨り好みの曲を奏でるに、我れと我が調哀れに成りて、いかにするとも彈くに得堪えず、涙ふりこぼして押やりぬ。
— 樋口一葉 『われから』 青空文庫
夜床はしろじろとした涙にぬれ、明くれば鷄の聲に感傷のはらわたをかきむしられた。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
白梅に明くる夜ばかりとなりにけり を辞世として、縹渺よるべなき郷愁の悲哀の中に、その生涯の詩を終った蕪村。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
空々寂々の境で、山という山の気分が、富士山に向いて、集中して来る、谷から幾筋とない雲が、藍の腐ったような塊になって、立ち昇る、富士山はこの雲と重なって、心もち西へ西へと延びて来るようだ、蝕った雲の淵の深さが、何十尺かの穴となって、口が明く。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
あんまり強く、按摩をすると、彼女の胴体には穴が明くのであった。
— 葉山嘉樹 『労働者の居ない船』 青空文庫
安全地帯に立っていた中年の下町女が何気なしにバスの間を覗いていたがふと自分の前の少女を見付けてびっくりしたような顔をして穴の明くほど見詰めていたようである。
— 寺田寅彦 『初冬の日記から』 青空文庫
全級一度に教授することによって教員の手が明く。
— 寺田寅彦 『教育映画について』 青空文庫