浮き世
うきよ
名詞
標準
文例 · 用例
しかし、私だってまさか馬方で果てる了簡でもない、目的も希望もあるのだけれど、ままにならぬが浮き世かね」 渠は茫々たる天を仰ぎて、しばらく悵然たりき。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
白糸は情に勝えざる声音にて、「そりゃあ、もうだれしも浮き世ですよ」「うむ、まあ、浮き世とあきらめておくのだ」「今おまえさんのおっしゃった希望というのは、私たちには聞いても解りはしますまいけれど、なんぞ、その、学問のことでしょうね?
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
そこが浮き世じゃないか」 白糸は軽く小|膝を拊ちて、「黄金の世の中ですか」「地獄の沙汰さえ、なあ」 再び馭者は苦笑いせり。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
繰り返しても繰り返しても飽くを知らぬのは、またこの懐旧談で、浮き世の波にもまれて、眉目のどこかにか苦闘のあとを残すかたがたも、「あの時分」の話になると、われ知らず、青春の血潮が今ひとたびそのほおにのぼり、目もかがやき、声までがつやをもち、やさしや、涙さえ催されます。
— 国木田独歩 『あの時分』 青空文庫
ある生まれつき盲目の人が生長後手術を受けて眼瞼を切開し、始めて浮き世の光を見た時に、眼界にある物象はすべて自分の目の表面に糊着したものとしか思えなかったそうである。
— 寺田寅彦 『物理学と感覚』 青空文庫
しかしどうもそれ随意にならないのが浮き世ってな、よくしたものさ。
— 泉鏡花 『夜行巡査』 青空文庫
つれなさは浮き世の常になり行くを忘れぬ人や人にことなる とも書いてある。
— 梅が枝 『源氏物語』 青空文庫
「散ればこそいとど桜はめでたけれ」(何か浮き世に久しかるべき)などとも口ずさみながら同車の人々とともに二条の院へ参った。
— 若菜(下) 『源氏物語』 青空文庫