突として
とつとして
副詞
標準
suddenly
文例 · 用例
小山の峰通り立てる松の並木の遠見には馬の鬣のやうなるが現はれつ隠れつする、金字形したる山の嶺の、心あてに見しあたりならぬところに突として面出す、ことにおもしろし。
— 幸田露伴 『雲のいろ/\』 青空文庫
其後同君の文を余り目にしませんでしたが、近く「二狂人」や「ふさぎの虫」等の翻訳、其から色色の作を見まして漸く文壇の為に働かるる事の多くなって来たのを感じて居りました中、突として逝去の報に接したのは何だか夢のように思えてなりません。
— 幸田露伴 『言語体の文章と浮雲』 青空文庫
かの女は唐突として規矩男から逃げ、武蔵野のとある往還へ出るまでのかの女は、ほとんど真しぐらに馳けた。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
そこへ従僕が突として現われて、手に何か知らぬ薄い筐様のものを捧げて来た。
— 幸田露伴 『連環記』 青空文庫
其後|幾日も無くて、河内の平野の城へ突として夜打がかかった。
— 幸田露伴 『雪たたき』 青空文庫
中岩の奇は平凡の中に突として奇をほしいまゝにしてゐるので愈※妙なのである。
— 幸田露伴 『華嚴瀧』 青空文庫
薄黄の傾斜面と緑の平面、平面、平面、鉾杉の層、竹藪、人家思いきり濃く、また淡く霞む畳峰連山、雨の木曾川はその此方の田や畑や樹林や板屋根の間から、突として開けたり離れたりする。
— 北原白秋 『木曾川』 青空文庫
今は心も漫に足を疾むれば、土蔵の角も間近になりて其処をだに無事に過ぎなば、と切に急がるる折しも、人の影は突としてその角より顕れつ。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫