賤業
せんぎょう
名詞
標準
文例 · 用例
昔の下級士族の家庭婦人は糸車を回し手機を織ることを少しも恥ずかしい賤業とは思わないで、つつましい誇りとしあるいはむしろ最大の楽しみとしていたものらしい。
— 寺田寅彦 『糸車』 青空文庫
己れ炊事を親らするの覚悟なくば彼の豪壮なる壮士の輩のいかで賤業を諾わん、私利私欲を棄ててこそ、鬼神をも服従せしむべきなりけれ。
— 福田英子 『妾の半生涯』 青空文庫
お鳥には自分も亦賤業婦風情のやつて來るこんなところへ來たのかと云ふ反省心が起つたやうだし、こちらも亦宿のものから處女をここへ誘拐して來たと思はれはしないかと云ふ疑念が先きに立つた。
— 發展 『泡鳴五部作』 青空文庫
どうせ、人のをつとでも構はず、かの女が暫時胡魔化してゐればいいと云ふ覺悟を持つてゐるなら――そして神田の同郷人や炭屋の主人を胡魔化し損ねたのが事實であつたとすれば――賤業婦の心も同前で、こちらもさう正直にかの女を待遇する必要はないといふ迷ひが生じて來る。
— 發展 『泡鳴五部作』 青空文庫
」「それは、不自由なこともあつただらうが、賤業婦などに入れあげる金はあつても、わたしの方の約束は履行しないのですか?
— 斷橋 『泡鳴五部作』 青空文庫
あたまの上には、無學、無趣味、無作法、卑俗で、話と云へば、賤業婦の噂ばかりの憲兵連がゐるのを思ひ出した。
— 毒藥を飮む女 『泡鳴五部作』 青空文庫
營々役々として錙銖の利を爭つて、成功して資本家となつてゐるものも、これを羨望しつつ勞動者となつてゐるものも、Platon の目から見れば等しく賤業者(β)である。
— 森鴎外 『古い手帳から』 青空文庫
吉原なんて賤業婦のいる所へ行く因縁がありませんわ。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫