金紋
きんもん
名詞
標準
文例 · 用例
こちの人は、京町の交番に新任のお巡査さん――もっとも、角海老とかのお職が命まで打込んで、上り藤の金紋のついた手車で、楽屋入をさせたという、新派の立女形、二枚目を兼ねた藤沢浅次郎に、よく肖ていたのだそうである。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫
うるせえから、あごをはずして、ふところの中へでもしまっちまえッ」 しかられているまに、八ツ山下をこちらへ回って、葵の金紋打ったるおはさみ箱がまず目にはいりました。
— 七化け役者 『右門捕物帖』 青空文庫
「津軽だ」 と、挟箱の金紋を見た侍が、叫んだ。
— 直木三十五 『三人の相馬大作』 青空文庫
」 深雪が、顔を上げると、拝領物を飾る棚、重豪公の手らしい、横文字を書いた色紙、金紋の手箪笥、琴などが、綺麗に陳んでいた。
— 直木三十五 『南国太平記』 青空文庫
遠州縞の湯上りの尻絡げで、プロの生活には不似合いな金紋黒塗の乳母車を押して行く容子は抱えの車夫か門番が主人の赤ちゃんのお守をしているとしか見えなかった。
— 内田魯庵 『最後の大杉』 青空文庫
沼南の金紋|護謨輪の抱え俥が社の前にチャンと待ってるんだからイイじゃないか。
— 内田魯庵 『三十年前の島田沼南』 青空文庫
大方はすゝきなりけり秋の山 伊豆相模境もわかず花すゝき 二十余年前までは金紋さき箱の行列整々として鳥毛片鎌など威勢よく振り立て振り立て行きかいし街道の繁昌もあわれものの本にのみ残りて草刈るわらべの小道一筋を除きて外は草の生い出でぬ処もなく僅かに行列のおもかげを薄の穂にとどめたり。
— 正岡子規 『旅の旅の旅』 青空文庫
喜べば則ち花開き鳥下る処、悲めば則ち木落ち風行く処、平和なれば則ち水草|蕾黄にして佳人足を濯ふ処、不平なれば則ち乞児巌頭に踞して遥に金紋先箱大鳥毛の行列を瞰む処。
— 正岡子規 『病牀譫語』 青空文庫