燃え落ちる
もえおちる
動詞
標準
文例 · 用例
雲は東から西へと引いたように取れると一天は石灰洞のような大口を開けて、見る見るうちに次第にひろがり、碧い初冬の冴え返った空が、冷たい鯖色をした湖水のようになって、金光ちらりと黒砂に燃え落ちる、黒砂の一線、天に向って走るところ、頂上火口の赭禿げた土は、火を翳したように眩ゆくなる。
— 小島烏水 『雪中富士登山記』 青空文庫
飛行機から爆弾を投下する光景や繋留気球が燃え落ちる場面があるというので自分の目下の研究の参考までにと見に行ったのが「ウィング」であった。
— 寺田寅彦 『映画時代』 青空文庫
アノ椿の、燃え落ちるように、向うの茅屋へ、続いてぼたぼたと溢れたと思うと、菜種の路を葉がくれに、真黄色な花の上へ、ひらりと彩って出たものがある。
— 泉鏡花 『春昼後刻』 青空文庫
燃え落ちる薪がぼうつと炎をあげる音が夢うつつのなかに聞かれた。
— 島木健作 『生活の探求』 青空文庫
憂えを胸におさえつつも、非常に向って、ゆっくりした足どりで進んで行くうちに、おびただしく馬の嘶く声、軒の燃え落ちるらしい音、竹のハネル音、それと共に、近隣で鳴らす半鐘の音までが、いとど凄愴たる趣を添え来るのであります。
— めいろの巻 『大菩薩峠』 青空文庫
政宗それを取り上げて見ると、唐太宗親筆の序――王右軍の筆蹟――独眼竜の一つの目が、その全巻の中へ燃え落ちるばかりになっているのを見て、急に驚き出したのは細川三斎であった。
— 白雲の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
五 じりじりッと燈芯の燃え落ちる音が、しばしのしじまを破ってえあたりを急に明るくした。
— 邦枝完二 『おせん』 青空文庫
自分の屋敷の燃え落ちる焔の光の中に、実に運命的なものを見てしまったのです。
— 乞食志願 『奇談クラブ〔戦後版〕』 青空文庫