粗硬
そこう
名詞
標準
文例 · 用例
かくてこのあはれなる木は、粗硬な樹皮を、空と風とに、心はたえず、追惜のおもひに沈み、懶懦にして、とぎれとぎれの仕草をもち、人にむかつては心弱く、諂ひがちに、かくてわれにもない、愚事のかぎりを仕出来してしまふ。
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫
しかし氷河を欠いた日本アルプスには、それほど雪の働きを示さないから、岩石は鋭い山稜や、尖った峰となって、粗硬な形態を示している。
— 小島烏水 『高山の雪』 青空文庫
かかる被告には通有とも云うべく皮膚は粗硬で色沢がない。
— 平出修 『公判』 青空文庫
何かぎすついた粗硬な感じで、小夜子の言うように、田舎では立派な財産家の奥さまであったらしい、品格もないことはなかったが、話題はいつも低級であった。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
「そのようなものは、額、小鬢の抜け上った、田舎者におまかせなされ、学問武芸――すべてああした粗硬の業は、そなたなぞの行るものではない。
— 三上於兎吉 『艶容万年若衆』 青空文庫
壮年の粗硬と青年の純情さ、 二月二十五日 地面には、まだ昨日降ったばかりの雪が、厚く積って居る。
— 宮本百合子 『結婚問題に就て考慮する迄』 青空文庫
いかにも永い冬と戦ってきたというような萎縮けた、粗硬な表情をしていた。
— 葛西善蔵 『贋物』 青空文庫
しかもわれわれは、ここに繰り展げられている心理情景の物しずかな進行プロセスを、身裡に体感するまでには何という労力と時間とを費やし、あわせて調子の粗硬さから来る一種の不快の感じを忍ばねばならぬことだろう。
— 神西清 『飜訳遅疑の説』 青空文庫