掠り傷
かすりきず
名詞
標準
文例 · 用例
取るに足らぬ女性の嫉妬から、些かの掠り傷を受けても、彼は怨みの刃を受けたように得意になり、たかだか二万|法の借金にも、彼は、(百万法の負債に苛責まれる天才の運命は悲惨なる哉。
— 太宰治 『虚構の春』 青空文庫
凍った雪が二人を担って、掠り傷さえ受けもせず易々と谷底へ下り立ったが突兀たる雪の巌、氷張り詰めた河の畔、脹れ上がった綿かのように雪を持ち上げている灌木など四辺は荒涼と見渡たされたけれど、鬨の声の主は見当らない。
— 国枝史郎 『蔦葛木曽棧』 青空文庫
」 と再び掛け声あって、老師の剣は切り下ろされたが、とたんに振った丈余の白髪グルグルと剣に捲きついたためか掠り傷さえ付かないらしい。
— 国枝史郎 『蔦葛木曽棧』 青空文庫
「味な気になったねえということさ」「いやどうしまして、そうでもない」 真ん中どころを射あてられたので、テレて九十郎はとぼけたようにいい、小さな赤い提灯によって、飾られている部屋の隅の、稲荷の神棚へ視線を投げ、「稲荷め、ほんとに験のない野郎だ、あちこち掠り傷負わしゃアがった。
— 国枝史郎 『血煙天明陣』 青空文庫
) 気がついて見れば持った刀で、足に掠り傷をつけたと見え、血が甲を流れていた。
— 国枝史郎 『血煙天明陣』 青空文庫
それで様子を窺っていると、三度目に清水に呼ばれた時、古田の奴、狂言強盗で入りもしない泥坊に、ホンのちょっと掠り傷を負わされて、ひどい目に遭わされたように見せかけ、残りの原稿をすっかり自分の懐へ入れちゃったのです。
— 甲賀三郎 『ニッケルの文鎮』 青空文庫
……心の臓にふれて、しかもこれを深く貫かず、さりげなき掠り傷の如くに見えますのは、鶴に近づいて手突矢をもって突いたゆえにございます」「なるほど、事理いかにも明白。
— 丹頂の鶴 『顎十郎捕物帳』 青空文庫
喜八 二人ともやにッこい腕前だから、親分は僅な掠り傷、友蔵、金四郎は死んだが、あとの三人はピンピンしてらあ。
— 長谷川伸 『瞼の母 二幕六場』 青空文庫