鉄敷
かなしき
名詞
標準
文例 · 用例
見るとこの家の主人は五十ばかりのお爺さんですが、独身者と見えてお神さんも子供も居ず、たった一人で一生懸命鉄槌で鉄敷をたたいて、テンカンテンカンと蹄鉄を作っています。
— 夢野久作 『豚吉とヒョロ子』 青空文庫
それを無茶先生はヤットコで引き出して、大きな鉄敷の上に乗せて、片手に大きな鉄槌をふり上げて、「スッテンスッテンスッテン」 とたたきましたので、豚吉の身体はだんだん長く延びて来て、当り前の長さになりました。
— 夢野久作 『豚吉とヒョロ子』 青空文庫
無茶先生は豚吉の身体をたたき直しますと、そのまんま火の中へ入れて、今度はヒョロ子を引きずり出して、鉄敷の上に乗せて、二つにタタき屈げましたので、ちょうど当り前の人間の長さになりました。
— 夢野久作 『豚吉とヒョロ子』 青空文庫
という地響きと鉄敷の上の疳高く張り上がった音が縫って……ごっちゃになり、一つになり、工場全体が轟々と唸りかえっていた。
— 小林多喜二 『工場細胞』 青空文庫
外界の刺戟によって発動した自己の感激、意望というものを、一先ず、能う限り公正な謙虚な省察の鉄敷の上にのせ、容赦なく批判の力で鍛えて見る。
— 宮本百合子 『われを省みる』 青空文庫
未来の都市を鍛え出す、大なる火炉と巨なる鉄敷との周囲闇靄の中に浮かべる漆黒に光る顔、つと伸び縮みする筋肉逞しき背……などの人間神ら、息を切らしてる労働者ら、彼らの間における争闘であった。
— JEAN-CHRISTOPHE 『ジャン・クリストフ』 青空文庫
そして、鉄敷のうえに、それを置くや否、小鎚を把って唇を噛みしめ、一念に鍛ち初めた。
— 吉川英治 『山浦清麿』 青空文庫
夜半も、鞴が唸り、鉄敷の響きが洩れ、冬の月へ、凍て返った。
— 吉川英治 『山浦清麿』 青空文庫