忽々
忽々
名詞
標準
文例 · 用例
文彦は速力を早めて近づくと、先方もそれと察したか忽々に飛び乗って、もはや飛行船は飛び去る準備をすべく、その大きな両翼を緩やかに動かし初めた。
— 押川春浪 『月世界競争探検』 青空文庫
磯が火鉢の縁を忽々叩き初めるや布団がむくむく動いていたが、やがてお源が半分布団に巻纏って其処へ坐った。
— 国木田独歩 『竹の木戸』 青空文庫
このごろ宿場の玉を売り込みに行った奴があるかも知れねえ」「成程、わかりました」 庄太は忽々に出て行った。
— 青山の仇討 『半七捕物帳』 青空文庫
二人は一杯機嫌でお此にからかって、その袂などを引っ張るので、お此はうるさいのと癪に障るのとで、一つ嚇かしてやろうと思って、袂から西洋マッチをとり出して、手早く摺りつけて二、三本飛ばせると、二人は火が飛んで来るのにびっくりして、忽々に逃げ出した。
— 妖狐伝 『半七捕物帳』 青空文庫
わたしも何だか気味がわるくなって、忽々に逃げて帰りました」「おめえはお鎌と心安くしているのか」「別に心安いというわけでもありませんが、あの婆さんは小金を持っているので、時々ちっとぐれえの小遣いを借りることもあるのです。
— 十五夜御用心 『半七捕物帳』 青空文庫
「おまえさんが見たという幽霊はどんなものでしたえ」「わたくしも怖いのが先に立って、たしかに見定めませんでしたが、提灯の火にぼんやり映ったところは、なんでも若い女のようでした」「女はこっちを見て笑いでもしたのかえ」「いいえ、別にそんなこともありませんでしたが、なにしろ怖いので忽々に逃げて来ました。
— 化け銀杏 『半七捕物帳』 青空文庫
六月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕 六月十八日 第二十九信 大笑いね、私は再び、というよりは寧ろ忽々に舞い戻って目白のテーブルでこれをかいて居ります。
— 一九四一年(昭和十六年) 『獄中への手紙』 青空文庫
それにもかかわらず、作者としての眼を、どこに据えて作品を書いてゆくかということになると、何か忽々と自信なく爪立って自身の興味ふかい実際生活の彼方の空漠としたところを手探りはじめる観がある。
— ――文学と生活との関係にふれて―― 『見落されている急所』 青空文庫