卸問屋
おろしどんや
名詞
標準
文例 · 用例
中風で寝ている父親に代って柳吉が切り廻している商売というのが、理髪店向きの石鹸、クリーム、チック、ポマード、美顔水、ふけとりなどの卸問屋であると聞いて、散髪屋へ顔を剃りに行っても、其店で使っている化粧品のマークに気をつけるようになった。
— 織田作之助 『夫婦善哉』 青空文庫
お前が健康になってくれさえすれば、どこからか二千円ばかり算段して来て、下駄の卸問屋をして、自分で卸してまわるのに……と云うておりましたが、それも今は夢になってしまいました。
— 夢野久作 『山羊髯編輯長』 青空文庫
下等のところでは肉の切り売りをする五燭光の影、上等なのでは良心の卸問屋に輝く百燭光の燦めきが夜の世間から退散しない筈であります。
— 夢野久作 『鼻の表現』 青空文庫
鉄の卸問屋の次女である千鶴子は金銭に不自由がないとはいえ、パリの最高級のサロンへ出入すれば予期しない贅沢な心も植えつけられるであろうが、若い時代に人の見られぬものを見ておくのも、思い残さぬ後の慰めとなって、心も休まるであろうと矢代は羨しく思うのだった。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
知っているだろうが卸問屋だ。
— 国枝史郎 『染吉の朱盆』 青空文庫
堀へついて真一文字に牧野|河内の下邸、その少し手前から鎧の渡しを右手に見て左坂本町へ折れようとする曲角に、金山寺御味噌卸問屋江戸本家八州屋という看板を掲げた店が、この重なる凶事に見舞われた当の現場であった。
— 三つの足跡 『釘抜藤吉捕物覚書』 青空文庫
それでも、市大会社の腰高椅子や卸問屋の地下室から来たらしい若者達はコンクリートではない水をバチャバチャかきわけ、空気と日光を感じて日曜を笑っている。
— 宮本百合子 『ロンドン一九二九年』 青空文庫
名古屋の方から移つて來たとかで、すべての事が、今日でいふ宣傳になつて、美しい娘のゐることと、色とりどりな洋傘の卸問屋だつたのが、落著きすぎて陰氣なほどの町へ、強い刺戟をあたへた。
— 長谷川時雨 『「郭子儀」異變』 青空文庫