引き明け
ひきあけ
名詞
標準
文例 · 用例
記紀にはないが、天手力男命が、引き明けた岩戸を取って投げたのが、虚空はるかにけし飛んでそれが現在の戸隠山になったという話も、やはり火山爆発という現象を夢にも知らない人の国には到底成立しにくい説話である。
— 寺田寅彦 『神話と地球物理学』 青空文庫
それに比べて、求める心のないうちから嘴を引き明けて英語、ドイツ語と咽喉仏を押し倒すように詰め込まれる今の学童は実にしあわせなものであり、また考えようではみじめなものでもある。
— 寺田寅彦 『読書の今昔』 青空文庫
」 引き明けた戸口から、石でも投げ付けるように、小さな声が一斉に叫び立てた。
— 佐左木俊郎 『手品』 青空文庫
然しさういふ氣が出れば出るだけ、義雄はわざとさうした氣ぶりを見せないで勢ひよく二階の梯子段をあがつて行き、「氷峰、ゐるか」と、から紙を引き明ける。
— 斷橋 『泡鳴五部作』 青空文庫
例のどぶを渡つて、戸を明けると、今夜は斷つてあつたので締りはしてなかつたが、醉つてゐるのと早く横になりたいとの爲めの荒ぢからで、自分の引き明けた戸はがらりと大きな音を立てた。
— 毒藥を飮む女 『泡鳴五部作』 青空文庫
忠次達が、関所へかかったのは、夜の引き明けだった。
— 菊池寛 『入れ札』 青空文庫
四 三月四日の朝、玄白は寅の二つに近い頃、新大橋の藩邸を出て、浅草橋から蔵前を通って、広小路に出て、馬道から山谷町の出口の茶屋に着いたのは、春の引き明けの薄紫の空に、浅草寺の明け六つの鐘が、こうこうと鳴り渡っている頃であった。
— 菊池寛 『蘭学事始』 青空文庫
噂をすれば影……」 と七代が頬をパッと染て起き上りながら、障子を引き明けた。
— 夢野久作 『名君忠之』 青空文庫