紛らかす
まぎらかす
動詞
標準
文例 · 用例
で、恁う此女に顔を見られると、擽られる様な、かつがれてる様な気がして、妙に紛らかす機会がなくなつた。
— 石川啄木 『鳥影』 青空文庫
で、恁う此女に顏を見られると、擽られる樣な、かつがれてる樣な氣がして、妙に紛らかす機會がなくなつた。
— 石川啄木 『鳥影』 青空文庫
その言に、猿は人の泣き声を聞くと腸絶えて死ぬからこうして紛らかすと、〈猿声悲し、故に峡中裳を沾すの謡あり、これすなわち人の声の悲しきを畏る、異なるかな〉とあるが何の異な事があるものか、人間でも人の罪よりまず自分を検挙せにゃならぬような官吏が滔々皆これだ。
— 猴に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
東京には、早稲田時代の友達がたくさん居るし、気を紛らかすつもりじゃろ。
— 火野葦平 『花と龍』 青空文庫
私たちなら、侘びしくても、本を読んだり、景色を眺めたりして、幾分それをまぎらかすことが出来るけれど、新ちゃんには、それができないんだ。
— 太宰治 『女生徒』 青空文庫
さらにはげしく舌打ちて、 長ぞまなこをそらしぬと、楽手はさびしだんまりの、 投げの型してまぎらかす。
— 宮沢賢治 『文語詩稿 一百篇』 青空文庫
しかし如何に面白い画本でも毎日々々同じ物を繰返して見たのでは十日もたたぬうちに最早陳腐になつて再び苦痛をまぎらかす種にもならない。
— 正岡子規 『病牀六尺』 青空文庫
お上の縄にかけられて竹|槍に肋を縫わるる前、せめては朋友の情に依り、此の拙者がこの場で命を貰うばかり――世評が真と解りなば、呉羽之介どのその場を立たせは申さぬぞ」 呉羽之介は、思い入ったような露月の面持を眺めて、もはやまぎらかすことも出来なくなり、今は自棄になって震える唇で言い放ったのでした。
— 三上於兎吉 『艶容万年若衆』 青空文庫