揺起
揺起
名詞
標準
文例 · 用例
が……此方の胸が痛んだばかりで、揺起すまでもなく、幸にまた静になった。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
… ト前刻、止せ、と云つて留めたけれども、其でも女中が伸べて行つた、隣の寐床の、掻巻の袖が動いて、煽るやうにして揺起す。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
さて、寝る段になって、そのすっと軽く敷いた床を見ると、まるで、花で織った羅のようでもあるし、虹で染めた蜘蛛の巣のようにも見える―― ずかと無遠慮には踏込み兼ねて、誰か内端に引被いで寝た処を揺起すといった体裁…… 枕許に坐って、密と掻巻の襟へ手を懸けると、冷かった。
— 泉鏡花 『星女郎』 青空文庫
劇く物思ひて寝ねざりし夜の明方近く疲睡を催せし貫一は、新緑の雨に暗き七時の閨に魘るる夢の苦く頻に呻きしを、老婢に喚れて、覚めたりと知りつつ現ならず又睡りけるを、再び彼に揺起れて驚けば、「お客様でございます」「お客?
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
そこでイヨイヨ好奇心を唆られた弓削医学士は、尚もそこらを隈なく探検している中に、意外にもS岬の突端の岩山の上で、大の字|型にグーグー眠っている東作爺を探出したので、取敢えず揺起して倫陀病院に連行して、弱り込んだまま寝ているロスコー氏に附添わした。
— 夢野久作 『S岬西洋婦人絞殺事件』 青空文庫
今は何ともならばなれと思ひ定めて和尚の枕元なる種子島の弾丸、轟薬を二つながら抜取り、代りに唾液にて噛みたる紙玉を詰め置き、扨、和尚を揺起して、かく/\の人、六部の姿して此寺に来ませしと、世間の噂、取り交ぜて告げ知らせしに和尚、打喜ぶ事|一方ならず。
— 夢野久作 『白くれない』 青空文庫
夜は深々と更渡り、八ツの鐘がボーンと響く途端に、主人が勝五郎を揺起しました。
— 三遊亭圓朝 『根岸お行の松 因果塚の由来』 青空文庫
隣りに寝ている祖父が揺起して、ものが憑くのだからと言って九字を切ったりしたことがある。
— 高村光太郎 『回想録』 青空文庫