歓語
かんご
名詞
標準
文例 · 用例
光と熱と歓語で充たされた列車。
— 梶井基次郎 『過古』 青空文庫
葉子はしかし、いつでも手ぎわよくその場合場合をあやつって、それから甘い歓語を引き出すだけの機才を持ち合わしていたので、この一か月ほど見知らぬ人の間に立ちまじって、貧乏の屈辱を存分になめ尽くした木村は、見る見る温柔な葉子の言葉や表情に酔いしれるのだった。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
そして何とはなく倉地をじらしてじらしてじらし抜いたあげくに、その反動から来る蜜のような歓語を思いきり味わいたい衝動に駆られていた。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
六 薄暮の印象うまし接吻……歓語……さあれ、空には眼に見えぬ血潮したたり、なにものか負傷ひくるしむ叫ごゑ、など痛む、あな薄暮の曲の色、――光の沈黙。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
うまし接吻……歓語…… 七 うめき暮れゆく日、血に濁る床の上にひとりやすらふ。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
母屋にまた、おこる歓語……三十九年八月 砂道日の真昼、ひとり、懶く真白なる砂道を歩む。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
はや温泉の沈黙――烏樟の繁み仄透き灯も薄れ、歓語絶えぬ。
— 北原白秋 『第二邪宗門』 青空文庫
一生の恋だ、命かけての愛だの信実だのと云つた蜜の如ないつかの抱擁も千言万句の誓ひも歓語も、但しは狂ひに狂つた欲念の焔も、ただ一息に押しこかしてゆく「時」の力の前には何等の矜持も権威もあつたものでは無い。
— 北原白秋 『桐の花』 青空文庫