火定
かじょう
名詞
標準
文例 · 用例
向うの真砂町の原は、真中あたり、火定の済んだ跡のように、寂しく中空へ立つ火気を包んで、黒く輪になって人集り。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
道節が火定に入った円塚山というは名称の類似から本郷の丸山だろうともいうし、大学の構内の御殿の辺だろうという臆説もある。
— 内田魯庵 『八犬伝談余』 青空文庫
「滅卻心頭火亦涼」と云つた火定の僧の覚悟は、此の支那火夫の忍従に慣れた無感不覚と帰を一にするのであらうか。
— 附 満蒙の歌 『満蒙遊記』 青空文庫
或いはその産屋の中で、後世所謂火定の終を遂げられたのであったかもしれない。
— 焼屍・洗骨・散骨の風俗 『火葬と大蔵』 青空文庫
なおこの頃に火定(自ら火を放って焼死すること)または禅定(生きながら土中に埋り死ぬこと)なども行われているが、これは習俗ではなくして限られた人達の信仰ゆえ、ここにはわざと除筆することとした。
— 中山太郎 『本朝変態葬礼史』 青空文庫
しかし沙門の人だけに、武士の列には並ばず、本堂の御厨子の前に、蔀の格子戸や薪を積んで、仏者らしい火定のかたちをとって死んだ。
— 筑紫帖 『私本太平記』 青空文庫
よく、坐定、立定、火定などといつて、大悟した大往生のやうに名僧傳に書いてある死に方なども、あれは、禪からいつても、滿點ではないらしい。
— 吉川英治 『折々の記』 青空文庫
坐定はもつとも多く、火定は惠林寺の快川などがやつて有名であり、女でも鎌倉の惠春尼のやうな美僧さへやつて見せてゐるが、立定では、妙心寺の關山和尚があるのみである。
— 吉川英治 『折々の記』 青空文庫