ぐっ
ぐっ
副詞
標準
文例 · 用例
糟谷はくるしまぎれに、そんな考えをおこしてみたものの、それも長くはつづかず、すぐまたぐったりとなって、時重博士がいってくれた「どうとかなるだろう」を頼りにわずかに安心するほかはなかった。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
ぐっしゃり一まとめに土塊のように置いてあった。
— 伊藤左千夫 『奈々子』 青空文庫
平安朝このかた一千年の伝統をだらりの帯に染め出しているような京の舞妓に「オープンでドライヴおしやしたらどうどす」などといわれると腹の底までくすぐったい感じがする。
— 九鬼周造 『外来語所感』 青空文庫
そして過失に驚いた様子をしながら、人々の足下に散らばっている破片を集め、丁寧に謝罪しながら、婦人客の裾についた液体の汚点をぬぐった。
— 萩原朔太郎 『ウォーソン夫人の黒猫』 青空文庫
今では多人数の会へ出ても、不意に人の頭をなぐったり、毒づいたりしようとするところの、衝動的な強迫観念に悩まされることが稀れになった。
— 萩原朔太郎 『僕の孤独癖について』 青空文庫
蝶ヶ岳から短沢へ下りて来た自分は、先ずこの清い流れに嗽ぎもし、頭も洗い、顔も拭いた、気が遠くなるような悪臭の蕕草を掻き分けたことや、自分の肩から上を気圏のように繞ぐっていた蚋の幾十|陣団やに窒息するかと苦しんだことも、夢の谷へ下りては、夢のように消えて、水音は清々しい。
— 小島烏水 『梓川の上流』 青空文庫
この附近は偃松の原でなければ、暗礁のような岩角が立っていて、高山植物が点じている、なお北岳を見ていると、東の谷、西の谷、北の谷から霧が吹いて来て、その裾は深谷の方に布きながら、頂上を匝ぐって、渦を巻いている。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
次第に喬木の森林に入った、白く光る朽木は、悪草の臭いや、饐えたような地衣の匂いの中に立ち腐れになっている、うっかり手が触れると、海鼠の肌のような滑らかで、悚然とさせる、毒蚋が、人々の肩から上を、空気のように離れずにめぐっている、誰も螫されない人はない、大樺池を直ぐ眼の下に見て、ひた下りに下る。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫