焼刄
やけじん
名詞
標準
文例 · 用例
この河が嬌えて、夜寒にヒシと岸辺に寄り添ふ時、銀いろの波がたつて、恰かもダマスクス刀の焼刄のやうにきらめいて、青々としたドニェープルは再び眠りに落ちる。
— VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI 『ディカーニカ近郷夜話 後篇』 青空文庫
例の帝国主義などといふものは附焼刄だが、あの勇敢な心持には十分に共鳴が出来た。
— 田山録弥 『閑談』 青空文庫
右の二篇の中のつね子といふ女は、作者がより多く同情してゐるかし子よりも、爲す事する事が付燒刄で堪らなく「いやな奴」である。
— 「八千代集」を讀む 『貝殼追放』 青空文庫
「拜見いたします」 作法も何んにもありません、靜かに鞘から拔いて調べましたが、これも二本とも何んの異状もなく、燒刄の匂ひも美しく、玲瓏として水が垂れさうです。
— 弱い浪人 『錢形平次捕物控』 青空文庫
短刀はかなり業物らしく、燒刄の色も見事ですが、疊の上へ一寸ばかり突つ立つてゐるのと、刄に血の跡も無いのが不思議です。
— 密室 『錢形平次捕物控』 青空文庫
何時の間に、そんなに利巧になつたんだ」「利巧はあつしの地ですよ」「そいつは知らなかつたが」「馬鹿は附け燒刄で、――死んだお袋はさう言ひましたよ。
— 花見の留守 『錢形平次捕物控』 青空文庫
お前は間拔けな顏をして居れば宜いんだ」「間拔けな顏は地ですがね」「利口さうに見えるのは附け燒刄か」 そんな事を言ひ乍ら、二階へ登りました。
— 系圖の刺青 『錢形平次捕物控』 青空文庫
養父の萬兵衞と仲の良くなかつたことは、本人の幸吉も承認してをりますが、あとはお常のいつたこと以上はなんにも知つてゐず、この男の賢さは附け燒刄で、個性も洞察も推察力もなんにも持つてゐないことを、やがて平次も知り盡してしまひました。
— 棟梁の娘 『錢形平次捕物控』 青空文庫