映発
えいはつ
名詞
標準
文例 · 用例
安宅先生、蝶子、老女二人、――言い代えれば、恩愛、恋、生活――この三面の鏡によって僅かに葛岡という青年の自分は他力的に、現実の存在を映発せしめられているのだ。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
三面の鏡の映発する苦悩によって、はじめて自分は近頃、なるほど自分は生きているなという自意識を強められて来たのだ。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
○長命寺の下、牛の御前祠の地先あたりは水|特に深くして、いはゆる○墨田の長堤もまた直に水を臨むをもて、陽春三月の頃は水の洋たると互に相映発して、絶好の画趣と詩興とを生ず。
— 幸田露伴 『水の東京』 青空文庫
つまりは内から映発するのだ。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
山は高房山の横点を重ねた、新雨を経たような翠黛ですが、それがまた※を点じた、所々の叢林の紅葉と映発している美しさは、ほとんど何と形容して好いか、言葉の着けようさえありません。
— 芥川龍之介 『秋山図』 青空文庫
森に埋まった丘陵の青緑は反射する日光を映発して金色を彩っている。
— ――黙子覚書―― 『夢は呼び交す』 青空文庫
昭和三十五年早春、頼もしき鶯の声を味わいつつ 阿佐ヶ谷の七葉山房にて清太道人梅が香や雷鳥の影まぼろしに春雪写山行 どこから降るのかいつまで降るのか、分らぬような山の雪も、旧正月が峠でようやく間遠に、いつか角度を高めた陽光は、積雪に映発する。
— 中村清太郎 『ある偃松の独白』 青空文庫
染物の色は何だかわからぬが、柳の緑に映発する鮮な色のような気がする。
— 柴田宵曲 『古句を観る』 青空文庫