後ろ様
うしろざま
名詞
標準
文例 · 用例
「あっ」と叫んで後ろ様にパタパタと五、六歩逃げたほどである。
— 国枝史郎 『八ヶ嶽の魔神』 青空文庫
爾時、御新姐の顔の色は、こぼれかかった艶やかなおくれ毛を透いて、一入美しくなったと思うと、あのその口許で莞爾として、うしろざまにたよたよと、男の足に背をもたせて、膝を枕にすると、黒髪が、ずるずると仰向いて、真白な胸があらわれた。
— 泉鏡花 『春昼』 青空文庫
しかし、硝子を飛び、風に捲いて、うしろざまに、緑林に靡く煙は、我が単衣の紺のかすりになって散らずして、かえって一抹の赤気を孕んで、異類異形に乱れたのである。
— 泉鏡花 『燈明之巻』 青空文庫
娘は籠の内なる丸の有らん限を我頭に擲げ付け、續いて籠を擲げ付けしに、われ驚きて跳り下るれば、車ははや彼方へ進み、和睦のしるしなるべし、娘のうしろざまに投じたる花束一つ我掌に留りぬ。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
お蓮様は、うしろざまに手をついて、今にも失神せんばかり――萩乃はかたわらの侍女の手をグッと握って、はりさけそうに眼をみはっている。
— 日光の巻 『丹下左膳』 青空文庫
うしろざまに階段へ一足かけたお藤の姿は、作りつけのように動かなかった。
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
太刀風三寸にして疾知した泰軒うしろざまに飛びすさるが早いか、ちょうど眼前に虚を噛まされておよいでいる突き手を、ジャリ……イッ!
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
立とうとする源三郎へ、背をもたせかけて、うしろざまに突いた手で、男の裾をおさえました。
— こけ猿の巻 『丹下左膳』 青空文庫