掻き探る
かきさぐる
動詞
標準
文例 · 用例
趣あるかな水中の河、その河身を超越の筏に乗り同死同生の水棹で掻き探るとき、掻き寄すれば歿き父以下数脈のいのちの流れは、わたくしの一筋のいのちに入り、放つとき、わが一筋のいのちの流れは彼等の数脈の中に融け入ります。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
濃霧はそそぐ……数の、見よ、人かげうごき、闌くる夜の恐怖か、痛きわななきにただかいさぐる手のさばき――霊の弾奏、盲目弾き、唖と聾者円ら眼に重なり覗く。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
ニーベルンゲン――暗い霧の子、|霧の衣、ああ霧だ霧だよ、霧、霧、霧……」 と法水の手が、頸の廻りをかいさぐると、握った指の間から、すうっと這い出るように海霧が遁れて行くのだが、さてそうして開いた掌には烟の筋一つさえ残らないのである。
— 小栗虫太郎 『潜航艇「鷹の城」』 青空文庫
主人公は、病母に対してTの字型に、さながら幼児が母の懐でも掻い探る如く、左手を病母の――革のヴェストンを着けた左手を、病母の脇の下へ差入れ加減に、病母は蒲団から半身を乗り出して、崩れ落ちた手を心持青年の背へ、かけるような恰好であったといわれている。
— 橘外男 『仁王門』 青空文庫