緩
かん
形容動詞
標準
文例 · 用例
朝飯をたべて自分が近所へ遊びに出ようとすると、お松はあわてて後から付いてきて、下駄を出してくれ、足袋の紐を結び直してくれ、緩んだへこ帯を締直してくれ、そうして自分がめんどうがって出ようとするのを、猶抑えて居って鼻をかんでくれた。
— 伊藤左千夫 『守の家』 青空文庫
この音が平安朝において語の中および終において「ワヰウヱヲ」の音に変ったのですが、ワ行の音はwで初まる音で、wは唇を合せて発する音ですが、唇音の「ファフィ」などの音も、やはり唇を合せて発する音で、ハ行音がワ行音にかわったのは、唇の合せ方が緩くなったのであります。
— 橋本進吉 『古代国語の音韻に就いて』 青空文庫
顔面の表情が「いき」なるためには、眼と口と頬とに弛緩と緊張とを要する。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
口は、異性間の通路としての現実性を具備していることと、運動について大なる可能性をもっていることとに基づいて、「いき」の表現たる弛緩と緊張とを極めて明瞭な形で示し得るものである。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
これはいずれの建築にも自然に伴う直線の強度の剛直に対して緩和を示そうとする理由からであろう。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
ともすれば彼女は、注意力の弛緩からして、他のことを考えてぼんやりしていた。
— 萩原朔太郎 『ウォーソン夫人の黒猫』 青空文庫
谷が狭くなって、崖側を行くと、緩いながらも雪の傾斜で辷るから、ミヤマナナカマドの枝を捉えながら上る、前にも増した雪の断裂で、草鞋に踏み蹂った雪片は、山桜の葩弁のように、白く光ってあたりに飛び散る。
— 小島烏水 『槍ヶ岳第三回登山』 青空文庫
(立ちながら休むときは、脊の担い梯子へ、息杖を当てがって、肩を緩めるので「一本立てる」というのである。
— 小島烏水 『槍ヶ岳第三回登山』 青空文庫