小風
こかぜ
名詞
標準
文例 · 用例
小風は、可厭、可厭…… 幼い同士が威勢よく唄う中に、杢若はただ一人、寒そうな懐手、糸巻を懐中に差込んだまま、この唄にはむずむずと襟を摺って、頭を掉って、そして面打って舞う己が凧に、合点合点をして見せていた。
— 泉鏡花 『茸の舞姫』 青空文庫
私の少しばかりの身の廻り品を纏めて小風呂敷包みにして、それを抱えおじさんのように私に附添って母のところへ送り返した及川は、ごくあっさり「お嬢さまは私が行った時、蒟蒻を煮ておいでになりました」 と報告しました。
— 岡本かの子 『扉の彼方へ』 青空文庫
小風呂敷一つの空身の俺ですら、十足あるいては腰をのし、一町あるいては息を休めなければならない熱さでありました。
— 平出修 『夜烏』 青空文庫
」と言って、水口の後の竿にかかっていた、塩気の染み込んだような小風呂敷を外して瓶を包みかけたが、父親の用事をするのが、何だか小癪のようにも考えられた。
— 徳田秋声 『足迹』 青空文庫
それはおとわの家の女中で、小風呂敷を持って何か買物にでも出てゆくらしかった。
— 海坊主 『半七捕物帳』 青空文庫
買い物の助惣焼を小風呂敷につつんで店を出ると、そこへ通りかかって、やあ、親分と声をかける者がありました。
— 吉良の脇指 『半七捕物帳』 青空文庫
「民谷氏、小平めをつかまえましたぞ、窃って逃げた薬は、これに」「これは忝ない」伊右衛門は貼りかけていた提燈を投げ棄てるようにして、長兵衛から小風呂敷の包みをもらい「して、小平めは」 其処へ関口官蔵と中間の伴助が、小平をぐるぐる巻きにして入って来た。
— 田中貢太郎 『南北の東海道四谷怪談』 青空文庫
その人は齢六十路余に傾きて、顔は皺みたれど膚清く、切髪の容などなかなか由ありげにて、風俗も見苦からず、唯異様なるは茶微塵の御召縮緬の被風をも着ながら、更紗の小風呂敷包に油紙の上掛したるを矢筈に負ひて、薄穢き護謨底の運動靴を履いたり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫