粗壁
あらかべ
名詞
標準
文例 · 用例
粗壁の田舎家の奥座敷で主人と中老の男の盃の献酬がはじまる。
— 岡本かの子 『東海道五十三次』 青空文庫
その真中のところに、中二階のついた木造の家が見えており、屋根は赤く、壁は鼠いろ、というよりは寧ろ粗壁のままで――ちょうど今時、屯田兵の宿舎や、ドイツ人の移民の住居に建てられているような家だ。
— または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊 『死せる魂』 青空文庫
壁と言ったところでほんの粗壁、竹張の骨へ葦を渡して土をぶつけただけでまだ下塗りさえ往っていないのだが、武家長屋の外壁だから分が厚い。
— 怨霊首人形 『釘抜藤吉捕物覚書』 青空文庫
露草の茎粗壁に乱れる万里の城 いまは何かしらうらぶれた感じが深い。
— 林芙美子 『新版 放浪記』 青空文庫
露草の茎粗壁に乱れる万里の城 何かうらぶれた感じが深い。
— 林芙美子 『放浪記(初出)』 青空文庫
しかしこの老獪な用心棒は、打ち込んで行く代わりに背後へ退き、粗壁へ守宮のように背中を張り付け、正面に、梁から、ダラリと人形芝居の人形のように下がり、尚グルグルと廻っている、典膳とお浦との体の横手から、恐そうに頼母を見詰めた。
— 国枝史郎 『血曼陀羅紙帳武士』 青空文庫
上塗りのしてない粗壁は割れたり落ちたりして、外の明りが自由に通っている。
— 葛西善蔵 『贋物』 青空文庫
大工に家を手入れをさせる時も、粗壁に古新聞を張る時も、従妹を伴れては老父が出かけて行った。
— 葛西善蔵 『贋物』 青空文庫