墨黒
すみくろ
名詞
標準
文例 · 用例
小さな張り板ぐらいの恰好の木枠に白紙を貼って、それに筆太に墨黒々と「原野九郎」とか「小菅雷三」とか「不破伊勢次」とかそういった感じのする名前が書きひけらかしてある。
— 寺田寅彦 『柿の種』 青空文庫
それで車の上で感服したような驚いたような顔をして、きょろきょろ見廻して来ると所々の辻々に講演の看板と云いますか、広告と云いますか、夏目漱石君などと云うような名前が墨黒々と書いて壁に貼りつけてある。
— ――明治四十四年八月堺において述―― 『中味と形式』 青空文庫
半紙に墨黒々と朝妻船とかいて貼り出してあるから、おおかた朝妻船と云うものだろうと高柳君はしばらく後ろの方から小さくなって眺めていた。
— 夏目漱石 『野分』 青空文庫
その表面には墨黒々と左のような文句が記されて、赤インキで二重圏点が附けてある。
— 夢野久作 『暗黒公使』 青空文庫
但、軒先の底抜燗瓶と古釘の風鈴にブラ下った蒲鉾板が、新しいのと取換えられて違った狂歌が墨黒々と書いて在る。
— ――博多名物非人探偵 『狂歌師赤猪口兵衛』 青空文庫
』斯う言つて、借りて、赤々と鮮明に読まれる自分の認印の上へ、右からも左からも墨黒々と引いた。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫
大幅な洋紙に墨黒々と書いて、赤い『インキ』で二重に丸なぞが付けてある。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫
初夏の夕映の照り輝ける中に門生が誠意を籠めて捧げた百日紅樹下に淋しく立てる墓標は池辺三山の奔放|淋漓たる筆蹟にて墨黒々と麗わしく二葉亭四迷之墓と勒せられた。
— 内田魯庵 『二葉亭四迷の一生』 青空文庫