不幸中の幸い
ふこうちゅうのさいわい
表現名詞
標準
small mercy (from some misfortune)
文例 · 用例
塗師重兄弟も嘆息しながら、「まずお互い様に生命に別条なく不幸中の幸い……しかし、我々は逃げ損くなって実に酷い目に逢いやした。
— 焼け跡の身惨なはなし 『幕末維新懐古談』 青空文庫
陸地によった港近くの坐礁は、まず、不幸中の幸いと言わねばなるまいと思った。
— 本庄陸男 『石狩川』 青空文庫
三千夫少年には、不幸中の幸いだった。
— 海野十三 『海底大陸』 青空文庫
この西南戦争が全国統一の機運を導いたことは、せめて不幸中の幸いであった。
— 第二部下 『夜明け前』 青空文庫
御墨付が無事だったのは、不幸中の幸いですが、手元不如意の赤井左門が、八所借りをしたところで、二千両という大金の工面が付きません。
— 大盗懺悔 『銭形平次捕物控』 青空文庫
風がないのと、暮の街で注意が行届いたので、これだけで済んだのは不幸中の幸いでしたが、困ったことは、肝腎の銭形平次が、それっきり行方知れずになってしまったことです。
— 鉄砲汁 『銭形平次捕物控』 青空文庫
社頭の森の深い木立の前に置きっぱなされた二つの駕籠、その迷惑は全く思いやられるばかりだが、これでも案外なことの一つに、立ち塞がったいたずら者が、少しも危険性を帯びていなかったということだけが不幸中の幸いでしょう。
— 弁信の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
「なんでも館山の二十軒にしるべの農家があるそうで、老母をそこへ預け、自分はすぐに退国するというはなしだ、……いまにして思えば、不縁になったのは不幸中の幸いだったな」 菊枝は黙って聞いているうちに、なぜともなく登野村にいた時の或る日のことを思いだした。
— 不断草 『日本婦道記』 青空文庫