金屏
きんびょう
名詞
標準
文例 · 用例
中の茶屋へ着くと、松虫草の紫は、見る影もなく褪せているが、鳥冑草は濃紫に咲いている、そして金屏風を背後にした菊花のように、この有毒植物の、刺戟強い濃紫は、焼砂の大壁を背景にして、荒廃の中に、一点の情火を、執念くも亡ぼさずにいる。
— 小島烏水 『雪中富士登山記』 青空文庫
それから伯爵の釵を抜いて、意気込んで一振り振ると、……黒髪の颯と捌けたのが烏帽子の金に裏透いて、さながら金屏風に名誉の絵師の、松風を墨で流したようで、雲も竜もそこから湧くか、と視められた。
— 泉鏡花 『伯爵の釵』 青空文庫
先刻も一度その(北国一)を大声で称えて、裾短な脛を太く、臀を振って、ひょいと踊るように次の室の入口を隔てた古い金屏風の陰へ飛出して行ったのがこの女中らしい。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
ところでその金屏風の絵が、極彩色の狩野の何某在銘で、玄宗皇帝が同じ榻子に、楊貴妃ともたれ合って、笛を吹いている処だから余程可笑しい。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
そこが水屋のように出来ていて、それから大廊下へ出入口に立てたのが件の金屏風。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
で、金屏風の背後から謹んで座敷へ帰ったが、上段の室の客にはちと不釣合な形に、脇息を横倒しに枕して、ごろんとながくなると、瓶掛の火が、もみじを焚いたように赫と赤く、銀瓶の湯気が、すらすらと楊貴妃を霞ませる。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
」 で、所在なさに、金屏風の前へ畏って、吸子に銀瓶の湯を注いで、茶でも一杯と思った時、あの小児にしてはと思う、大な跫足が響いたので、顔を出して、むこうを見ると、小児と一所に、玄関前で、ひょいひょい跳ねている女があった。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
……」 今度は座敷に入って、まだ坐るか坐らないに、金屏風の上から、ひょいと顔が出て、「腹が空いたろがね。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫