掘り下げ
ほりさげ
名詞
標準
文例 · 用例
附近一帯の水涸れで、工面のいい家は、どん/\井戸を掘り下げたり、水道を引いたりして、文字通り「涼しい顔」をしてゐられるのであるが、この埃の溜つた井戸の使用者は借家人であり、その家主は、前代は財布の紐で首でも吊つたんではないか、と疑はざるを得ない吝ん坊なのである。
— 葉山嘉樹 『井戸の底に埃の溜つた話』 青空文庫
だもんだから、近所隣で井戸を掘り下げると、そこで最初はおとなしく見物してゐるが、水気を含んだ土が出て来、土混りの赤又は黒の水が出るに及んでは、子供心に冷静を失つてしまふのである。
— 葉山嘉樹 『井戸の底に埃の溜つた話』 青空文庫
秋山は陸面から八十尺の深さに掘り下げた、彼等自身の掘鑿を這い上りながら、腰に痛みを覚えた。
— 葉山嘉樹 『坑夫の子』 青空文庫
掘り下げて行くと、際限が無いような気配さえ感ぜられた。
— 太宰治 『東京八景』 青空文庫
むしろ、あらゆる伝統を深く掘り下げ、噛みこなして、十二分に腹をこしらえてから後に、自分の腹一杯の声を出して、自分の中にある本当のものを正直に表現するのが本当の「野獣」である。
— 寺田寅彦 『二科展院展急行瞥見記』 青空文庫
小初は掘り下げた櫓台下の竪穴から浅瀬の泥底へ水を掻き上げて行くと、岸の堀垣の毀れから崩れ落ちた土が不規則なスロープになって水底へ影をひくのが朦朧と目に写って来た。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
万治の頃、伊達家が更に深く掘り下げて舟を通すようになったので、仙台堀とも云っている、この切堀の断崖は、東京の高台の地層を観察するのに都合がよかった。
— 岡本かの子 『河明り』 青空文庫
桂子は常住青年らしい闘志を失はない彼に敬服したが、彼自身何ものをも掘り下げ得ない浮いた忙しさを危んだ。
— 岡本かの子 『花は勁し』 青空文庫