抜差
ぬきさし
名詞
標準
文例 · 用例
串戯も嵩じると、抜差しが出来なくなる。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
若し其の笛を取った男が、笛を証拠にして御帰りなされた御主人様におかた様の上を悪しく申しますれば、証拠のある事ゆえ、抜差しはならず、おかた様は大変なことに御成りなされまする。
— 幸田露伴 『雪たたき』 青空文庫
」彼女は慵げな声で言つて、空で指環を抜差してゐた。
— 徳田秋聲 『或売笑婦の話』 青空文庫
ちやうど泥沼へでも足を踏込んだやうな形で、彼も借家人も、全く抜差しのならない破滅に引込まれた。
— 徳田秋声 『風呂桶』 青空文庫
たえ子は次の火曜日の昼頃に、再び三越の休憩室で落合ふことを約束して、そこ/\に袂を分つたのであつたが、二度も三度も……そして終ひには抜差のならないハメに陥つて行くのが不安であつた。
— 徳田秋聲 『復讐』 青空文庫
もとより江戸と駿府とに分けて進上するという初めからのしくみではなかったので、急に抜差しをしてととのえたものであろう。
— 森鴎外 『佐橋甚五郎』 青空文庫
ところが、そうして抜差のならない窮地に陥ったラザレフは、たちまち一策を案じたのだ。
— 小栗虫太郎 『聖アレキセイ寺院の惨劇』 青空文庫
恐ろしいハイカラの癖に、好んで和服を着て、時々はおでんの立食いもやろうという変り者ですから、山猫を日向へ出したような、露天の古道具屋をからかって、抜差しならずに、色付のガラスとも、ソロモン王の王冠のダイヤとも、見当の付かないものを背負こまされたのでしょう。
— 野村胡堂 『呪の金剛石』 青空文庫