燻り
くすぶり
名詞
標準
文例 · 用例
背後の村には燃えさしの家が、ぷすぷす燻り、人を焼く、あの火葬場のような悪臭が、部隊を追っかけるようにどこまでも流れ拡がってついてきた。
— 黒島伝治 『パルチザン・ウォルコフ』 青空文庫
ところが、枕木は炭焼竈の生木のように、雪の中で点火されぷす/\燻りながら炭になってしまうのだった。
— 黒島傳治 『氷河』 青空文庫
幻山を証拠立てるよう塩尻がたの尖から何やら煙のようなものの燻り出るのが見えるようでもある。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
出口を塞がれたような青春の情熱が燻り、乏しい才能が徒らに掘じくり返された。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
停車場を出て橋を一つ渡ると、直ぐそこに町端らしい休茶屋や、運送屋の軒に続いて燻りきった旅籠屋が、二三軒目についた。
— 徳田秋声 『あらくれ』 青空文庫
静けさや、靄の古びを黄蝋は燻りまどかに照りあかる。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
花瓦斯のほそきなげきに絹帷紅き天鵝絨、散り藉ける花束のくづ、おぼろげに室は青みて、うらわかき騎士が拍車の音の乱れ、舞の足ぶみ、頬のほてり、かろきさざめき、髪あぶら、あはれ、楽声、あたたかに交りみだれてゆめのごと燻りただよふ。
— 北原白秋 『第二邪宗門』 青空文庫
野袴をつけた若者が二人、畠の道具を門口へ転がしたまま、黒燻りの竈の前に踞んで煙草を喫んでいる。
— 鈴木三重吉 『千鳥』 青空文庫