認識力
にんしきりょく
名詞
標準
文例 · 用例
その時は僕もまだ年が若く、客觀の認識力がなかつたので、室生君の「東洋趣味への傾向」を、詩の同志を裏切る者として腹を立てた。
— 萩原朔太郎 『悲しき決鬪』 青空文庫
それは人間においては分離して現はれるところの二つの認識力、感性と悟性との統一である。
— 三木清 『認識論』 青空文庫
われわれは個である以上、此の二つの唯心、唯物のいずれか一つをその認識力に従って、撰ばねばならぬ運命を持っている。
— 横光利一 『新感覚派とコンミニズム文学』 青空文庫
この場合、国際的なプロレタリア文学運動が、二十世紀の世界文学の一発展としてもたらした文学の社会性、階級性についての諸観点、および作品の芸術的実感と歴史に対する客観的認識力との微妙な生きた関係の探求などは、民主的な文学の精髄をなす。
— 宮本百合子 『あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)』 青空文庫
どの男をも通じて、それだけの認識力は持つてゐる。
— VATER SERGIUS 『パアテル・セルギウス』 青空文庫
――かかる極めて自明なる事がらに對するあなたの無理解は、もとをただせば、第一には長期にわたる放埓な生活により、また第二には長期にわたる安逸により生じたる、最も普通なる感情および認識力の退化にある――ってね。
— ドストエーフスキイ 『永遠の夫』 青空文庫
そんな中で私は結婚したのであつたが、結婚後四ヶ月目に中耳炎に罹り、膿が頭腦を犯した爲め、知覺も認識力も不足し、醫師からは今後恐らく執筆は難かしからうと宣告を受けたばかりでなく、病中二度迄も裁判所へ召喚されて發賣禁止となつた私の作品に就て公判を受けねばならなかつた。
— 生田葵山 『永井荷風といふ男』 青空文庫
共通感官乃至共通感覚が、個人の精神力の問題から、こうやって、社会に於ける人間生活の認識力の問題にまで移されたのは、十八世紀のイギリスに於けるスコットランド学派の哲学によるのであって、トーマス・リードの常識学派的考察を以てその代表者とするということになっている。
— 戸坂潤 『思想としての文学』 青空文庫