籠絡
ろうらく
名詞
標準
文例 · 用例
わが娘の嫁入りの周旋役、そして自分への遺族手当の継続の鍵を握っているお店の大番頭、その嘉六が今度のわたくしの事件から度び/\わたくしの家へ出入りするからは、母がなんで彼の籠絡に骨を折らずに置きましょうぞ。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
女は知名の実業家、政治家をその男達のなかに数え、流石にしまいの声は落して、此処でもドーヴィル市長を始め賭博場の重な役員、世界の諸国から賭博に来た金持男達まで殆どイベットに籠絡されて居る、と云う。
— 岡本かの子 『ドーヴィル物語』 青空文庫
彼の口吻では此方二人が共謀になつて、悉皆彼方を籠絡して置かうといふやうな話だつた。
— 徳田秋聲 『媒介者』 青空文庫
故人は前にもいつた樣に恐ろしい功名心の強い人なのだから其呼吸を呑込んで居れば籠絡するのに何の苦もない。
— 長塚節 『記憶のまゝ』 青空文庫
人が老年になつてから、若かつた時の事を思つて、記念日の祝をするやうに、芸術の最も深く感ぜられるのは、死の魔力がそれを籠絡してしまつた時にある。
— 森鴎外 『追儺』 青空文庫
結婚してしまひさへすりやア、もう、安心して、娘の時の樣な羞恥と身だしなみ――寧ろ、男子の心を籠絡牽制して置く手段と云ふ方がよからう――を怠り、『わたしはあなたの物です、どうとも勝手におしなさい!
— 放浪 『泡鳴五部作』 青空文庫
「所が弟の野郎そんな玩具を持つて來ては、兄貴を籠絡する積だから困りものぢやありませんか」「御舍弟は其後何うなさいました」と宗助は何氣ない風を示した。
— 夏目漱石 『門』 青空文庫
お園と伊兵衛とはその以前から特別の関係が成立っていて、かれらは共謀して甚吉を籠絡し、その懐ろの銭を搾り取って、蔭では舌を出して笑っているというのである。
— 岡本綺堂 『真鬼偽鬼』 青空文庫