引き摺り
ひきずり
名詞
標準
文例 · 用例
詩に就いて云へば幻影も語義も感情を生発せしめる性質のものではないところにもつてきて感情はそれらを無益に引き摺り廻し、イメッジをも語義をも結局不分明にしてしまふ。
— 中原中也 『芸術論覚え書』 青空文庫
そして、まるで酒場の醉ひどれのやうな兵士の集團は濕つた路上に重い靴を引き摺りながら、革具をぎゆつぎゆつ軋らせながら劍鞘を互にかち合せながら、折折寢言のやうな唸り聲を立てながら、まだ五六|里先のN原まで歩かなければならなかつた。
— 南部修太郎 『一兵卒と銃』 青空文庫
私は首をすくめて痛む足を引き摺りながら厭や厭や歩き續けてゐた。
— 南部修太郎 『一兵卒と銃』 青空文庫
また一人の異國の修道士は僧衣を引き摺りながら、足音もなく這入つて來た。
— 南部修太郎 『修道院の秋』 青空文庫
提灯の灯で透かしてみるとかの藤吉なので、この野郎、今度はおれを殺しにでも来たのかと、襟首をつかんで内へ引き摺り込む。
— むらさき鯉 『半七捕物帳』 青空文庫
かれは娘を小声で制して、しばらくそっと窺っていると、猫は長い尾を引き摺りながら、踊るような足取りで板葺屋根の上をふらふらと立ってあるいた。
— 猫騒動 『半七捕物帳』 青空文庫
倒れるまで働くと云った歌女代の言質を取って、決してべんべんと寝そべっていることはならない、仆れるまで働いてくれと、真っ蒼な顔をして寝ている歌女代を無理に引き摺り起して、朝から晩まで弟子たちの稽古をつづけさせた。
— お化け師匠 『半七捕物帳』 青空文庫
これは水練に達した盗賊が水の底にかくれていて、錦の帯を囮に往来の旅人を引き摺り込んで、その懐中物や着物をみんな剥ぎ取るのだろうと云うんです。
— 帯取りの池 『半七捕物帳』 青空文庫