黒紬
くろつむぎ
名詞
標準
文例 · 用例
が、地は上下とも黒紬で、質素と堅実を兼ねた好みに見えた。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
つくねんとして、一人、影法師のように、びょろりとした黒紬の間伸びた被布を着て、白髪の毛入道に、ぐたりとした真綿の帽子。
— 泉鏡花 『露肆』 青空文庫
助太郎は武張った男で、髪を糸鬢に結い、黒紬の紋附を着ていた。
— 森鴎外 『渋江抽斎』 青空文庫
春とはいっても底冷えのする日で、おまけに雪さえ落ちて来たので、遠くもない堀田原まで行くのさえ気が進まなかったが、約束の稽古日をはずす訳にもゆかないので、栄之丞はいつもよりも早目に夕飯をしまって、一張羅の黒紬の羽織を引っ掛けた。
— 岡本綺堂 『籠釣瓶』 青空文庫
この分なら大丈夫じや」「今晩雨になるのも又一興だよ、ねえ、甘糟」 黒餅に立沢瀉の黒紬の羽織着たるがかく言ひて示すところあるが如き微笑を洩せり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
彼は女の貴族的に装へるに反して、黒紬の紋付の羽織に藍千筋の秩父銘撰の袷着て、白縮緬の兵児帯も新からず。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
甚太夫は菖蒲革の裁付に黒紬の袷を重ねて、同じ紬の紋付の羽織の下に細い革の襷をかけた。
— 芥川龍之介 『或敵打の話』 青空文庫
車上の客は五十あまり、色赤黒く、頬ひげ少しは白きもまじり、黒紬の羽織に新しからぬ同じ色の中山帽をいただき蹴込みに中形の鞄を載せたり。
— 徳冨蘆花 『不如帰 小説』 青空文庫