折節
おりふし
名詞
標準
文例 · 用例
この友人には理工科方面の友達は少なくて主に自分からそうした方面の話を聞くのであるが、その私がこの頃は自身ではあまり器械いじりはしないで主に助手の手を借りて色々の仕事をやっていることをこの友人が時々の話の折節に聞かされて知っているのである。
— 寺田寅彦 『夢判断』 青空文庫
奥様のお顔も存じております、私がついお米と馴染になりましたので、お邸の前を通りますれば折節お台所口へ寄りましては顔を見て帰りますが、お米の方でも私どものようなものを、どう間違えたかお婆さんお婆さんと、一体|人懐いのにまた格別に慕ってくれますので、どうやら他人とは思えません。
— 泉鏡花 『政談十二社』 青空文庫
折節は何をがな御慰に遊ばされむこと願はしく候」と申上げたり。
— 泉鏡太郎 『十萬石』 青空文庫
「そこまでは存じませんが、折節女の、ひい、ひい、と悲鳴を上げる声が聞えたり、男がげらげらと笑う声がしたり、や、も、散々な妖原だといいますで。
— 泉鏡花 『活人形』 青空文庫
それは旅中で知合になった遊歴者、その時分は折節そういう人があったもので、律詩の一、二章も座上で作ることが出来て、ちょっと米法山水や懐素くさい草書で白ぶすまを汚せる位の器用さを持ったのを資本に、旅から旅を先生顔で渡りあるく人物に教えられたからである。
— 幸田露伴 『観画談』 青空文庫
其の考へが高じて終には洋杖で前の男の耳の後を撞突くが如き奇な事を演じ出す人も折節は世にある。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
その癖お勢が帰塾した当坐両三日は、百年の相識に別れた如く何となく心|淋しかッたが……それも日数を経る随に忘れてしまッたのに、今また思い懸けなく一ッ家に起臥して、折節は狎々しく物など言いかけられて見れば、嬉しくもないが一|月が復た来たようで、何にとなく賑かな心地がした。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
弁舌は縦横無尽、大道に出る豆蔵の塁を摩して雄を争うも可なりという程では有るが、竪板の水の流を堰かねて折節は覚えず法螺を吹く事もある。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫