竹藪
たけやぶ
名詞
標準
文例 · 用例
不知八幡森も予は幾度か見て居るが、つれの人は始めてであるから、一寸立寄ったけれど、もう暗くなって石牌の文字も判らない、森というは名|許で今は全く竹藪に変っている、竹藪の中は闇々として暗いばかり空は青ぎるばかりに澄んで、そよとも動かぬ大竹藪の上には二三十の星が冷に光って居た。
— 伊藤左千夫 『八幡の森』 青空文庫
すべての農民等は、邸の中に氏神と地祖神を祭つて居り、田舍の寂しい街道には、行く所に地藏尊と馬頭觀音が安置され、暗い寂しい竹藪の陰や、田の畔の畦道毎には、何人もかつてその名を知らないやうな、得體のわからぬ奇妙な神神が、その存在さへも氣付かれないほど、小さな貧しい祠で祀られてゐる。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫
太陽は埃に暗く悽而たる竹藪の影人生の貧しき慘苦を感ずるなり。
— 萩原朔太郎 『氷島』 青空文庫
一塊の土塚、暗き竹藪の影にふるへて、冬の日の天日暗く、無頼の悲しき生涯を忍ぶに耐へたり。
— 萩原朔太郎 『氷島』 青空文庫
たとえば裏の竹藪に蛇が出たとか、蟇が鳴いてるとか、蟻の山が見つかったとか、梅の花が一輪|咲いたとか、夕焼が美しく出ているとかいうようなことを、だれか家人の一人が発見すると、一々それをヘルンの所へ報告に行く。
— 室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ 『小泉八雲の家庭生活』 青空文庫
初めて大久保の新居に移った時は、春の麗らかな日であって、裏の竹藪で鶯がしきりに鳴いてた。
— 室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ 『小泉八雲の家庭生活』 青空文庫
その四、五日前の午後に、近所の子供たちが、お庭の垣の竹藪から、蛇の卵を十ばかり見つけて来たのである。
— 太宰治 『斜陽』 青空文庫
私はあの竹藪に蝮が十匹も生れては、うっかりお庭にも降りられないと思ったので、「焼いちゃおう」 と言うと、子供たちはおどり上がって喜び、私のあとからついて来る。
— 太宰治 『斜陽』 青空文庫