慝
慝
名詞
標準
文例 · 用例
一人ぽつちの幕の中で、俺はこの女を引きいれて、限りない欝憂から逃れたいとあせつて居たときでも俺はある大切なもの、唯一なものを、まだ彼に慝して居たのではないか。
— 平出修 『瘢痕』 青空文庫
それを見て父の顔色は俄に変り、益々声を潜めて、『慝すには及ばんぞ、聞たら聞いたと言うが可え。
— 国木田独歩 『運命論者』 青空文庫
サア慝くさずに言うが可え。
— 国木田独歩 『運命論者』 青空文庫
慝すかお前は』と僕の顔を睨みつけましたから、僕も益々|可怕なり、『御免なさい、御免なさい』とたゞ謝罪りました。
— 国木田独歩 『運命論者』 青空文庫
然し与次郎が何の為に、悪戯に等しい慝名を用ひて、彼の所謂大論文をひそかに公けにしつつあるか、其所が三四郎には分らなかつた。
— 夏目金之助 『三四郎』 青空文庫
だから慝名にしてある。
— 夏目金之助 『三四郎』 青空文庫
此論文は零余子なる慝名の下にあらはれたが、実は広田の家に出入する文科大学生小川三四郎なるものゝ筆である事迄分つてゐる。
— 夏目金之助 『三四郎』 青空文庫
あゝ云ふ先生だから、一向知りません、何か間違でせう、偉大なる暗闇といふ論文は雑誌に出ましたが、慝名です、先生の崇拝者が書いたものですから御安心なさい位に云つて置けば、さうかで直済んで仕舞ふ訳だが、此際|左うは不可ん。
— 夏目金之助 『三四郎』 青空文庫