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蛍籠

ほたるかご
名詞
1
標準
文例 · 用例
」 とじりりと膝を寄せて、その時、颯と薄桃色の瞼の霑んだ、冷たい顔が、夜の風に戦ぐばかり、蓐の隈に俤立つのを、縁から明取りの月影に透かした酒井が、「誰か来て蛍籠を外しな、厭な色だ。
泉鏡花 婦系図 青空文庫
」と云ひながらお母さんは、青い蛍籠を手にして、光子さんの傍に来ました。
牧野信一 青空文庫
お母さんは、蛍籠を軒先に釣して、「綺麗でせう……」と云ひ残して居間の方へ行つてしまひました。
牧野信一 青空文庫
桜花散り来る竹縁に草餅を載せた盆の置かれたる、水草蛍籠なぞに心太をあしらいたる、或は銀杏の葉散る掛茶屋の床几に団子を描きたる。
永井荷風 砂糖 青空文庫
もう入梅の気構えの空が鬱陶しく、車室の中がじっとりと生暖いので、幸子と雪子とはうしろに靠れかかったままとろとろとし始め、妙子と悦子とは週刊朝日とサンデー毎日とを仲好くひろげて読んでいたが、そのうちに妙子が、「悦ちゃん、蛍が逃げてしまうわ」と、窓際に吊るしてある蛍籠を取って、悦子の膝の上に載せた。
下巻 細雪 青空文庫
それは昨夜、菅野家の爺やが悦子のために間に合せに拵えてくれた、缶詰の空缶の底を抜いて両側にガーゼを張った即席の蛍籠で、悦子はそれを大事そうに汽車の中まで持ち込んでいたのであったが、いつの間にかガーゼを括ってある紐が緩み、その隙間から蛍が一二匹|這い出していた。
下巻 細雪 青空文庫
妙子も、幸子が変に塞いでいるのが疲労のせいばかりでもなさそうなのを看て取って、何か考え込んでいたが、悦子が蛍籠へ水を遣りに立って行った隙に、「昨日はどんな工合やった?
下巻 細雪 青空文庫
」 と、おどろいた卜斎、斬りすべった厚重ねの太刀を持ちなおす間もなく、火の玉のように宙まわりをしてきた火焔独楽をガッキと刀の鍔でうけたが、そのとたんに、独楽の金輪と鍔のあいだから、まるで蛍籠でもブチ砕いたような、青白い火花が、鏘然として八|方へ散った。
吉川英治 神州天馬侠 青空文庫