苦吟
くぎん
名詞動詞-サ変動詞-他動詞動詞-自動詞
標準
laborious composition
文例 · 用例
どうせ目下が精神の貧寒時代であることは分つてゐますし、詩人が存外の苦吟をするのであることも分つてゐるのですから、もつとあけすけにして、もつと具体的なことを論ずることが、詩壇の急務ではありますまいか。
— 中原中也 『近時詩壇寸感』 青空文庫
禅房の一室夜いたくも更け渡りて孤燈沈々たる時、我ひとり冷えたる苦茗を啜つて、苦吟又苦吟、額に汗を覚ゆる惨憺の有様を、最も同情ある顔付して柱の上より見守りたるもこの帽子なり。
— 石川啄木 『閑天地』 青空文庫
ただ志して未だ風韻の神に到らず、境涯整はずして、また未だ苦吟の傷痕を脱し得ざるを恥づる。
— 北原白秋 『海豹と雲』 青空文庫
わたくしは蓬蓬として苦吟する。
— 北原白秋 『海豹と雲』 青空文庫
それに船側に添って乱れて駛りのぼる青い腹の、まるで白竜のような新鮮な波の渦巻と潮※とをつくづくと俯瞰しては、何とか歌にまとめようと苦吟もして見た。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
五月×日「退潮」に苦吟。
— 中島敦 『光と風と夢』 青空文庫
蜂須賀巡査は頻りに苦吟しはじめた。
— 大阪圭吉 『石塀幽霊』 青空文庫
世界に著き澎湃たる怒濤が死ぬに死なれない多感の詩人の熱悶苦吟に和して悲壮なる死のマーチを奏する間に、あたかも夕陽に反映えされて天も水も金色に彩どられた午後五時十五分、船長事務長及び数百の乗客の限りなき哀悼悲痛の中に囲繞かれて眠るが如くに最後の息を引取った。
— 内田魯庵 『二葉亭四迷の一生』 青空文庫