捉え所
とらえどころ
名詞
標準
文例 · 用例
勿論、当込みの際物であるだけに、狂言全体の上からいえば、ここという捉え所もないもので、その後ふたたび舞台にも上らなかったが、三幕目の情景だけはいつまでもわたしの頭にしみていたので、先年、わたしが「箕輪の心中」を書くときに、その場の趣を借用した。
— 岡本綺堂 『明治劇談 ランプの下にて』 青空文庫
そんな訳ですから、全部架空の事実で、頼家の仮面……ただそれだけが捉え所で、他には何の根拠もないのです。
— ――明治座五月興行―― 『修禅寺物語』 青空文庫
はっきり捉え所のない、変に気持ちが惹かされる、馬鹿げてるが打消せない、何とはなしに嫌な気だった。
— 豊島与志雄 『白血球』 青空文庫
而し一般的には女流は叙景叙事には男子の如き技量なく、矢はり彼女らの本領は女らしい材料、捉え所、において光っている。
— 杉田久女 『大正女流俳句の近代的特色』 青空文庫
古くは『正保図』より最近測量部の輯製二十万に至るまで、如何なる地図にも大小烏帽子の名は記載してあるが、さてそれが実際どの山に相当するかに就ては、まるで雲をつかむように捉え所がなかった。
— 木暮理太郎 『利根川水源地の山々』 青空文庫
標高からいえば高原たる資格に欠けてはいないが、さて何処が高原の本体であるかと考えて見ると、一向に捉え所がないのに驚く。
— 木暮理太郎 『那須、尾瀬、赤城、志賀高原』 青空文庫
初めのうちは現象が無闇と複雑に見え、それに実際に手にとって見るものがどれも特徴の捉え所がないように思われて、これでは保線人夫の人に見て貰うのと大差ないという気がして心細かった。
— 中谷宇吉郎 『凍上の話』 青空文庫
但大正年代だけに捉え所がこまかくもなり、複雑にもなっている。
— 柴田宵曲 『古句を観る』 青空文庫