無慚
むざん
名詞
標準
文例 · 用例
それを掻払うごとく、目の上を両手で無慚に引擦ると、ものの香はぱっと枕に遁げて、縁側の障子の隅へ、音も無く潜んだらしかったが、また……有りもしない風を伝って、引返して、今度は軽く胸に乗る。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
古今の手練、透かさぬ早業、頭を倒に、地には着かぬ、が、無慚な老体、蹌踉となって倒れる背を、側の向うの電信柱にはたとつける、と摺抜けに支えもあえず、ぼったら焼の鍋を敷いた、駄菓子屋の小店の前なる、縁台に※と落つ。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
それがせめてもの思遣りに見えたけれども、それさえ、そうした度の過ぎた酒と色に血の荒びた、神経のとげとげした、狼の手で掴出された、青光のする腸のように見えて、あわれに無慚な光景だっけ。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
」とやっと云って、烏帽子を正しく、はじめて上げた、女のような優しい眉の、右を残して斜めに巻いたは、笞の疵に、無慚な繃帯。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
と見ると、乳の辺、胸へ掛けて、無慚や、颯と赤くなって、垂々と血に染まった。
— 泉鏡花 『沼夫人』 青空文庫
無慚や、片頬は土に着き、黒髪が敷居にかかって、上ざまに結目高う根が弛んで、簪の何か小さな花が、やがて美しい虫になって飛びそうな。
— 泉鏡花 『星女郎』 青空文庫
自分は無慚の僧で、御仏の戒めを知らず知らず破っていたことも多かったであろうが、女に関することだけではまだ人の譏りを受けず、みずから認める過失はなかった。
— 手習 『源氏物語』 青空文庫
畑の一角に立つて、言葉もなく、無慚なさまを暫く見てゐた。
— 島木健作 『續生活の探求』 青空文庫
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無慚(むざん) は仏教が教える煩悩のひとつ。
出典: 無慚 — ウィキペディア / CC BY-SA 4.0